時蔵さんの八重、想像通り、期待以上の良さだった。
が、あまり評判が聞こえてこないのが残念。
初日でもかなり出来上がっていたので今回2度目とはいえそう違わず・・・
「加茂堤」の八重は本当に可愛い。
この場面は桜丸が中心で動かすからか常に控え目であり
でも若い夫婦の明るい情愛を感じさせる。
鬘がやや小ぶりに結った感じのもので、娘らしい緑色の着物と共にお似合い。
後半、ひとりになり牛と絡むところ、桜丸に任せて♪と言いながらも
やはり牛を怖がっている風をユーモラスに表現。可愛い〜(笑
大袈裟じゃないところが、若い娘のほほえましさを感じさせてよい感じだ。
最後に怖々牛に結んだ腰紐で仕丁をやっつけて決まる。
そして一転して後半は悲しい「賀の祝」
(全然話は違うが、今回時蔵さんは昼も夜も花道登場は相合傘ね)
よく言われることに「三つ子の嫁の中、なぜ八重だけ振袖か?」というのがあるけれど
あの八重の衣裳を考えた人はすごいと思う。
あの柄、あの色、そしてそれにあわせた赤い半衿。
ある意味すごい色合わせだと思うのだが、「賀の祝」の八重をきれいに見せる。
あの姿で桜丸の来ないのを不安げに待たれては・・・・・
白太夫とお参りから帰ってきても八重はしばし一人木戸口で佇む。
歌舞伎チャンネルの放送ではあの八重の姿は映っていなかった。
兄弟の諍いを心配しながらも夫の来ないのを不安がる。
その心情がとてもよくあらわれた立ち姿。あの立ち姿が良かった。
話を知っているものとしてはそれだけで涙を誘われる。
今回、白太夫は左團次さん。初日はまだ台詞が入ってなかったりしたのだが
2回目はもうすっかり白太夫で情感たっぷり。
松王、梅王が去ってからは八重と白太夫の見せ場。桜丸切腹の段。
白太夫まで隣に部屋に移ってしまい独りきりになる八重。心細げに周りを見回し、
また木戸口まで様子をみに出ようとして、縁先で極まる。きれいだ。
このちょっとした動きでも袂とか裾とかの線がきれいに出るのはなぜ?
吃又のおとくに似た形で極まるけれど、今回は振袖でお引きずり。
それでもなぜ裾、袂の乱れがないんだ?
そして木戸口まででて、八重といえばこのポーズなポーズ(笑
木戸の柱に凭れてさびしげに桜丸を待つ。これまたきれい。
(ここって柱に凭れて・・・と書いたけど実は凭れてないの。
体重掛けたら柱、倒れちゃうものね。)
ここで桜丸が納戸の奥からでてくる。桜丸は梅玉さん。
梅玉さんの桜丸も加茂堤ではかわいらしい若さあふれる感じだったが
ここでは憂いを含んで悲しみに沈んだ風情で登場。
桜丸に気付いた時に八重のセリフ
「ヤア、何時の間にやら来たとも言はず、案じる女房を思はぬ仕方。
兄弟衆の事について、親父様のお腹立ち。その場へは出もせいで、
マアなんでこなさんは納戸の内に。、訳を聞かして、聞かして」
ここ好き(笑)一気にこれをいうセリフ回し、義太夫な感じがとてもでていて好き。
この文字を見ただけで私は時蔵さんの声でこれが聞こえてくるほど。
今回、これを舞台で聴ける幸せよ
ここから八重の嘆きが始まる。
桜丸の話に納得もできず、なぜ死ぬのか、父はなぜ止めないのか
それなら自分も一緒に死ねと言ってほしい・・・と、必死な訴えが続く。
時蔵さんの語る台詞が心に迫る。
何とかしてあげたいと思ってしまうほど。
見ているこちらが桜丸を止める手立てはないのか・・と考えてしまう。
父・白太夫@左團次さんのかなしみ、苦しみも伝わってくる。
桜丸をはさんだ二人のやり取りに鼻の奥がツーンとしてくる。落涙寸前。
白太夫と八重の
「思ひ切つておりや泣かぬ、そなたも泣くな」「アヽ、アイ」
「泣くない」「アヽ、アイ」・・・
のセリフに敢え無く落涙。
だが、ちょっと残念だったのは梅玉さんの桜丸。
品があっていいのだが、八重と白太夫の強く深い悲しみに対してと〜ても淡白なお芝居。
桜丸のセリフが入ると今までの感動がすっと薄くなってしまうのだ。一歩後ろに下がる感じ?
で、また八重と白太夫の番になると気持ち盛り上がって泣きそうになり、
そしてまた桜丸になると一歩下がる・・そんな風に感じてしまった。
ガツガツ熱い芝居を希望する・・っていうのではないのだがあっさり過ぎかと・・
桜丸が九寸五分を腹に刺そうとするとその手を八重がとって止めるの場面。
ここでやめてと願う八重と止めてくれるなと願う桜丸が目と目を合わせ
最後の夫婦の無言のやり取りをする。
ここも好きな場面だ。なんともいえない二人の愛を感じる。
桜丸の手を握り、顔をのぞき込み泣きながら首を振る八重の姿には悲しみの極みを感じた。
そして桜丸が八重の手をとって後ろ手に回し自分の膝の下に組み敷き、
八重が動けないようにして切腹を果たす。
これも止めたい八重の必死さ、果たしたい桜丸の必死さがでて感動の場面なのだ。・・・・・が
どちらも何となく桜丸さんがおっとり過ぎて、私の感情の針は振り切ることなく終了だった。残念。
ま、時蔵さんの八重を堪能できたからよしとしましょ。
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